2009年10月05日

「結婚とパクスと事実婚」

「(世界発2009)私たち「結婚未満」 自由が魅力 連帯市民
協約、仏で10年」@朝日新聞
2009.09.23 東京朝刊

 共同生活をする2人の個人に、性別を問わず結婚に近い権利を認
める「連帯市民協約(PACS)」がフランスで導入されて10
年。今や異性間を中心に締結件数は結婚の半数を超える。同様な制
度が広がる欧州でも際だった普及ぶりだ。結婚にとらわれない自由
な生き方を求める人々に使い勝手のよさが受けているようだ。(パ
リ=飯竹恒一)
 「あと1、2年したら赤ちゃんを産みたい」。出版社に勤めるマ
リ・ボマンさん(30)がそう言うと、ドキュメンタリー製作会社
勤務のマルタン・ロランさん(31)がうれしそうにうなずいた。

 ●手続きは30秒

 一緒に暮らして4年余。今年2月、パリのセーヌ川右岸に念願の
アパルトマンを共同で買った。居間とキッチンに寝室二つの62平
方メートル。寝室の一つは将来の子ども部屋だ。

 「でも、結婚する気はまったくない」と口をそろえる。

 協約を交わしたのは07年10月。「一緒に暮らせればそれでい
い」というロランさんの考えと、「公に認められたカップルになり
たい」というボマンさんの希望の双方に沿う落としどころだった。

 結婚の場合、役所に行って市町村長の前で宣誓する式がある。親
類や友人を集めたセレモニーも通例だ。家族同士のつき合いもつき
まとう。

 協約では「締結当日は30秒ですんだ」とボマンさん。日本の簡
易裁判所にあたる小審裁判所で、届け出た通りに書類ができている
かどうか名前や生年月日などを確認しただけ。それぞれの両親と個
別に食事をしたが、両家が一堂に集まるセレモニーはしていない
し、指輪も買っていない。

 手続きは簡単でも「節税」効果は大きい。結婚した夫婦と同様に
一つの世帯として所得申告ができ、納める税金が減る。アパルトマ
ンは34万ユーロ(約4500万円)したが、思い切って買えたの
も、この制度があったからこそだ。

 協約の締結は初年度の99年は6151件だったが、07年に1
0万件を超え、08年には14万6千件に達した。ほとんどが男女
のカップルだ。一方、昨年の結婚件数は27万3500件。00年
に30万件を超えて以降、微減にとどまる。以前なら結婚を渋って
いたカップルが新たな選択肢に飛びついたというのが実態のようだ。

 同様の制度は欧州各国に広まっているが、協約が結婚の半数を超
えるのが仏の特徴。仏国立人口学研究所のパトリック・フェスティ
研究員は「オランダでも定着しているが、7分の1程度」と語る。

 フェスティ氏は、仏社会で協約が普及した背景として「子どもを
持つのに婚姻関係がなくてもよいと考える強い傾向」を指摘する。
仏では婚外子の割合が07年に50・5%と初めて半数を超えている。

 かつての「非嫡出子の相続分は嫡出子の半分」という規定はなく
なり、親の婚姻の有無に関係なく同じ権利が子どもに与えられる。
嫡出子、非嫡出子の法律上の区別もなくなった。子どものいる家族
を対象にした割引制度なども、親子関係を証明すれば済む。

 ほかにも、協約には「使い勝手のよい点」がある。

 例えば姓を変える必要がない。離婚は弁護士を立てて裁判所で手
続きをしなければならないなど金銭的、精神的な負担が多いが、協
約は一方が言い出せば解消できる。死別したパートナーが結んだア
パルトマンの賃貸契約も引き継ぐことができる。

 ●同性間に課題

 同性カップルの権利を念頭につくられた連帯市民協約は男女カッ
プルの自由と権利を拡大したが、「協約を締結したカップルに養子
縁組を認めない点が問題」と弁護士のカロリン・メカリさんは話
す。男女カップルは結婚に切りかえれば養子縁組ができるが、同性
カップルにはその道が閉ざされているからだ。

 欧州では01年のオランダを皮切りにベルギー、スペインで同性
間の結婚が制度化されたが、仏では認められていない。このため、
「同性でもせめて、協約を締結したカップルには養子縁組を認める
べきだ」という問題提起だ。

 08年の世論調査では、同性カップルに養子縁組を認めることに
51%が賛成し、反対の49%を上回る結果も出た。

 だが、今のところ動きだす様子はない。仏高等師範学校のエリッ
ク・ファサン教授(社会学)は「(男女カップルと子どもという)
親子関係だけは神聖な部分として残し、現状以上の社会変化を抑え
たいという意識が仏社会にあるのではないか」と指摘する。

 ◆キーワード

 <連帯市民協約(PACS=Le Pacte Civil d
e Solidarite)> 18歳以上の成人同士が共同生活
の契約を結ぶことで、税法上の特典などの権利が付与される制度。
負債の連帯責任など義務も伴う。同性愛者間のエイズ流行を背景
に、死別した同性カップルの残された側に住居などに関する法的権
利がない事態への対処策として検討され、99年にできた。1年目
は同性間が締結の約4割を占め、最近は1割を切る。99~08年
に約53万件が締結され、8万件以上が解消された。パリジャン紙
によると、08年は締結約14万6千件に対し、解消は2万335
4件。うち9559件は結婚に伴う解消だった。

 ■フランスにおける結婚と連帯市民協約(PACS)と事実婚

 【手続き・場所】

 <結婚> 役所に届け出て市町村長の前で宣誓

 <連帯市民協約(PACS)> 小審裁判所に必要書類を提出
し、受領書を受け取る

 <事実婚> なし

 【姓】

 <結婚> 話し合って決める

 <PACS> 変わらない

 <事実婚> 変わらない

 【父と子の親子関係】

 <結婚> 自動的に確定

 <PACS> 父親の認知が必要

 <事実婚> 父親の認知が必要

 【死去した相手が結んだ住居の賃貸契約】

 <結婚> 自動的に引き継がれる

 <PACS> 無条件に引き継げる

 <事実婚> 事実婚が周知されていたことなどを条件に引き継ぎ可能

 【所得申告】

 <結婚> 共同申告

 <PACS> 共同申告

 <事実婚> 別々に申告

 【死去した相手の年金】

 <結婚> 受け取れる

 <PACS> 受け取れない

 <事実婚> 受け取れない

 【義務】

 <結婚> 負債の連帯責任など

 <PACS> 負債の連帯責任など

 <事実婚> なし




Posted by あざれあ理事 at 06:38│Comments(0)
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